原資料の電子化で質向上

CRFを二重チェック

SDV省力化へ

CRS研究所(札幌市、代表取締役植草友幸氏)は、紙媒体の原資料を電子化し、一元管理する試みを進めている。原資料をCRS研究所で管理するに当たっては、「カルテ等の外部保存に関するガイドライン」に準拠し、被験者のプライバシー保護を最大限に重視する運用規則を作成した。

運用規則は2回にわたるIRBの審議で承認され、被験者へのインフォームド・コンセント、医療機関からCRS研究所へ原資料を搬送するリスク、原資料の管理体制やセキュリティなど多面的に検討して問題点を解決している。
既に包括支援業務を手がける「札幌産科婦人科治験ネットワーク」参加医療機関と共同で、この原資料をモニタリングやSDVに活用できるシステムを開発。現在までに3社の製薬企業から賛同を得て、実際の治験約60例で本格的な運用を進めている。
新たな試みとして、電子化した原資料の目次作りに着手し、一つの原資料を診療録、同意書、検査値、その他の検査にカテゴリー分けした。その結果、モニターの利便性向上と共に、品質管理(QC)につながるメリットが得られたという。
ただ、医療機関にある原資料と、CRS研究所に保管されている原資料との真正性をどうチェックするかという問題点があった。
植草氏は「CRFの品質を高めることはQCの根幹」と話しており、現在、CRFを作成したCRC本人がチェックした後、さらに別のCRCが再度確認する二重チェックを行なった上で、モニターによるSDVを行なっている。CRF作成からSDVまでの期間に、こうしたプレSDVのステップを導入することで、実際のSDVの省力化に貢献している。
複数医療機関の原資料が電子化され、CRS研究所1ヵ所に管理されることは、モニターにとって大きなメリットとなる。また、SMOにおいてCRFの二重チェックが行われることで、モニターからの疑義にCRCが速やかに対応でき、よりSDVが省力化されることになる。
最近では、治験のIT化が進み、電子カルテが治験に応用されつつある。ただ、まだ電子カルテ上で作成したCRFをそのまま依頼者へ渡すことは難しいのが現状だ。CRS研究所の試みは、将来的な電子カルテ導入を視野に入れながらも、現段階で最善の方法を模索した過渡的システムと言える。今後、システムのセキュリティ強化を図りながら、さらに効率的で質の高い治験を目指していく考えだ。