新規案件の受託で好調持続

~今期も黒字化を計画~

北海道を地盤とし、婦人科領域に強いSMOのCRS研究所は、子宮腺筋症や子宮筋腫、月経困難症などの治験を新たに受託し、好調を持続している。特に子宮筋腫の国際共同治験では、提携施設であるはしもとクリニック、吉尾医院の症例数がそれぞれ1位、2位となり、存在感を発揮。婦人科以外でも透析や慢性疼痛などの試験を実施しており、これまで培ってきた経験を武器にSMOとしての守備範囲を広げている。植草友幸社長は「案件が豊富なことから、前期に引き続き今期も黒字化を達成できる」と自信を示す。

前期は、子宮筋腫と子宮内膜症を対象に100症例以上の第Ⅲ相試験を実施する予定だったが、開発中断となった。大型案件がストップしたことは、想定外の誤算だったものの、新たな案件を受託しカバーした結果、黒字化を達成することができた。

産婦人科領域の治験をめぐっては端境期から抜けだし、アンメットメディカルニーズが高い疾患で少しずつ開発品目が出てきている状況。同社では確実に受注し、短期間で多くの症例組み入れを実現している。子宮腺筋症の第Ⅲ相試験と長期投与試験については、全国の3分の1に相当する目標症例数60例のうち、札幌産婦人科治験ネットワーク5施設で50例程度組み入れた。ただ、植草氏は「エントリースピードが非常に早く、IRBのタイミングがずれて開始が2週間程度遅れたことで目標に届かなかったのは残念」と話す。

また、子宮筋腫の国際共同治験では、世界1例目を逃したものの、はしもとクリニックと吉尾医院が症例数で世界トップを記録。治験のニュースレターにも紹介され、2施設が国際共同治験を牽引した。

品質とスピードを兼備した治験支援実績が呼び水となり、製薬企業からのリピートオーダーとして、月経困難症を対象とした新規案件を受託し、2月から試験を開始した。3施設が参加し、今後試験全体の目標症例数のうち約3割となる72症例の登録を目指す。

さらに別の製薬企業とも月経困難症を対象とした治験を今夏にも実施する予定で、5施設で50例程度を計画する。そのほか、子宮筋腫を対象とした新たな治験は、現在治験実施体制を検討しているところで、受託する方向。今後もCRCの高稼働が続く見通しだ。

婦人科以外の領域では、臨床研究や製造販売後調査の事務局支援を行う札幌市内の病院で、進行中の抗癌剤や癌ワクチンなどの血液内科試験に加え、消化器科の医療機器治験もスタートした。整形外科病院では、慢性疼痛を対象としたオピオイド薬の試験が進行中であるほか、神経内科のクリニックで片頭痛の試験も今秋に開始予定。透析を対象とした試験の実施も検討している。得意とする婦人科領域のみならず、他の疾患領域にサポートの幅が広がっているようだ。

規模を追求するのではなく、CRCが施設と連携して治験を成功させるための黒子の役割を担い、小さくとも医療で必要とされる会社になるのが目標。こうした中、植草氏は、「受託した試験では、国内・世界の第1症例にこだわっていきたい」と話す。「第1症例がCRSにとってのマイルストンではなく、症例を早く集積することで、スタッフのモチベーションが上がり、その結果として治験に参加している施設間でいい意味での競争意識が生まれ、期間短縮につながっていく」。そんな強い思いで北海道から治験を牽引していく。