婦人科領域の治験受託好調

~1施設多症例組入れ実現~

CRS研究所は、得意とする婦人科領域の治験受託が好調で、2022年2月期は過去最高と同水準の利益を確保し、8期連続の黒字決算を達成した。植草友幸社長は、「婦人科疾患のエキスパートSMOとして、着実に実績を積み上げてきた。1施設多症例の組み入れを積極的に行い、効率的かつ質の高い治験の進行に自信を持っている。今後もパートナーとの関係を大切にしながら事業を堅調に進めていきたい」と話している。

同社は昨年、子宮内膜症の第Ⅱ相試験を3施設で実施し、引き続き第Ⅲ相試験にも参加することが決まった。昨年後半にスタートした第Ⅲ相試験では、子宮内膜症と月経困難症を対象に2施設で約100例の組み入れを達成。“1施設多症例”を実現した。

今夏からも子宮筋腫を対象とした第Ⅲ相試験を実施する予定で、2施設で100例近い症例数の達成を目指している。植草氏は「1施設多症例の実現は、CRCリソースの効率的な運用という面でプラスに働いている」との認識を示す。同一施設内で集約して業務を実施することは、高い品質にもつながるという。

一方、1施設で数例といった一般的な症例数であれば、複数の治験を受託することが可能と考えられるが、植草氏は「クリニック規模では、多症例の治験実施中は患者層が異なる別の治験であっても、リソースの問題で受託が厳しくなる可能性がある」と指摘。「製薬企業が依頼したくなる施設であることが重要」と強調し、今後も1施設多症例で治験を進めていきたい意向を示した。

同社は現在、五つの婦人科クリニックと提携を結び、そのうち2施設で1施設多症例を実現している。婦人科以外に、整形外科、神経内科の施設との提携も継続中となっている。

一方、最近注目されているリモート治験について、婦人科領域では導入の動きが大きく進んでいないのが現状。患者側の要因として、発熱症状がほぼないために従来通り通院しているほか、評価部位の画像診断(エコー検査)が必要となるため、オンラインでは実施できない状況にある。

CRA側は1施設多症例を実現したことで、かえって訪問回数が増え、閲覧すべき原資料が非常に多くなるため、長時間の施設滞在が必要になっているという。

最近では、リモート治験の一つとして、リモートアクセスモニタリングを導入する動きが見られる。植草氏は「紙カルテで1施設多症例を実施しているクリニックでは非常にハードルが高い」と実感を語る。実際にCRCが通常業務を行いながら、紙カルテのPDF化やウェブカメラでの原資料閲覧といった作業を行うことは現実的に難しいようだ。

2019年に厚生労働省の通知でリスクに基づくモニタリングが認められたが、植草氏は「実際には全ての治験データの照合を行うフルSDVを行っているケースがほとんど」と現状を説明し、「サンプリングSDVの導入による効率的な治験の運用が必要」と訴える。

その上で、「サンプリングSDVでのモニタリングが進めば、CRAは少ない訪問回数で業務を進められるし、SMO側としても膨大なデータをPDF化する必要はなくなる。リモートと一言に進めるのではなく、本当に効率的な治験の進め方は何か考える必要がある」と提起している。

引き続き、婦人科領域の施設稼働が活発で、安定経営を維持している同社。今後も、婦人科領域に特化した1施設多症例の治験を推進することで生き残りを図っていきたい考えだ。