得意領域中心に不動の信頼

札幌を拠点とする北海道のSMO「CRS研究所」は、2013年2月期業績で2年連続の過去最高売上を更新し、好調が続いている。設立時から参加している札幌産科婦人科治験ネットワークを基盤にして、得意の産婦人科領域ではスピード、症例集積いずれも全国トップクラスを誇り、治験依頼者からの厚い信頼を得ている。他領域でも支援施設と強固な協力関係を築き、プロジェクトが順調に動いている。
産婦人科領域では、昨年度までに開始した子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮内膜症の3試験で、いずれも全国1例目の症例登録を達成した。
このうち子宮腺筋症は既に終了したが、実績が評価されて次相の受託に成功。既に開始したこの試験でも全国1例目を登録、契約症例数は初回契約の約180%に達しており、今期の見通しは明るい。植草友幸社長は「試験は年末から年明け頃まで続く。気を抜かずに服薬指導を含め、きちんとしたクオリティーで終わらせなければならない」と指摘する。
子宮筋腫も全国トップクラスの症例登録で、順調に完了した。
子宮内膜症は、はしもとクリニック、吉尾医院がそれぞれ登録数全国1位、2位となり、1施設あたりの登録数は全国平均の2倍以上の実績を残した。
植草氏に症例集積が高い理由を尋ねると、「これという秘訣は無い。CRCが医師としっかり話せる高いコミュニケーション能力を持ち、候補となる患者が来院したらすぐに電話が来たり、こちらからも電話一本で連絡できる関係を作っているだけ。院内でスタッフの一員として活動できることが大事」と話す。
整形外科領域では、北海道臨床開発機構が管理する文部科学省のトランスレーショナルリサーチ拠点事業「オール北海道」による人工股関節デバイスの医師主導治験をサポートしているほか、重度の膝・股関節痛と腰痛を対象としたオピオイドに関する2本の治験を今期開始する。
特殊領域では、移植片対宿主病の追加試験を終え、現在は慢性骨髄性白血病のグローバル試験や、移植後の抗生物質の予防投与に関する試験を進めている。
経営面ではプロトコール数は減っても、豊富な症例数によって業績が安定。一時は郊外に移したオフィスを札幌中心部に移転する準備を進めており、今月中に新拠点で営業を開始する。交通の便も良く、社員のモチベーションも高まっているという。
また、CRCの機動力アップを目的にタブレット端末を導入した。年明けから3月までテスト運用を行なってマニュアルも策定した。実は以前にiPadを配布したところ、あまり活用されなかったが、今回は女性でも扱いやすいサイズの小さいiPadminiを採用したところ、メール確認、患者のスケジュール管理などに利用され成功している。
現在スタッフは8名。このうち6名のCRCがフル稼働で7施設をカバーしている。
「着実に地道な活動を続け、今後も産婦人科領域を集中的に扱いながら、支援施設や製薬企業と良い関係を保っていく」のが同社の方針だ。

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