産婦人科領域で復調傾向

EDC入力に「iPad」導入

北海道で治験を支援するCRS研究所は、得意の産婦人科領域でSMO業務が復調傾向を見せている。昨年に開始した月経困難症の1試験が終了し、新たに子宮膿筋症の第Ⅱ相試験がスタート。さらに今秋から2試験が動き出す見通しで、案件が引きも切らない状況となっている。
昨年、CRS研究所は受託案件数が過去10年間で最も低調に推移したが、後半から一転して復調傾向が見られ、産婦人科領域のSMO業務を中心に受託案件が急増している。
得意の産婦人科領域は、昨年に開始した月経困難症の治験が終了。新たに「札幌産科婦人科治験ネットワーク」の5施設で子宮腺筋症の第Ⅱ相試験がスタートしたのに続き、今秋から2試験が開始予定となっている。
被験者リクルート業務は、小児感染症ワクチンの2製剤で135例の同意取得を達成。さらに1製剤については、ネットワーク参加施設の「札幌マタニティ・ウイメンズホスピタル」の小児科で治験を実施することが決定したため、CRS研究所として初めて小児感染症ワクチンのSMO業務を受けるとになった。病院近くに臨時事務所を設置するなど、万全の支援体制を整えているところだ。
透析領域は、SMO業務を行う「H・N・メディック」、CRC派遣業務を行う「札幌北楡病院」を合わせ、6プロトコール41例の治験を実施。特殊領域を手がけるCRC派遣業務は、引き続き慢性骨髄性白血病の国際共同治験、致死的な移植片対宿主病(GVHD)の治験、大腸癌の化学療法後の好中球減少を対象とした治験が進行中である。
一方、整形外科領域のCRC派遣業務は、人口股関節手術後の深部静脈血栓塞栓症(DVT)予防の第Ⅱ相試験がピークを迎えたことから、一段落した格好。新たに腰部脊柱管狭窄症の治験が動き出したほか、医療機器の人口股関節、CRC派遣業務として初めてとなる医師主導地検がスタートするなど、新境地を見せている。
現在、産婦人科領域のSMO業務が急増した結果、日本臨床薬理学会認定CRCの6人全員がフル稼働してもオーバーワーク気味の状態にあるという。
少数精鋭のCRS研究所にとっては、うれしい悲鳴とも言えるが、植草氏は「CRCの人員補強が課題」と話す。
こうした多忙な業務に追われる中、新たな取り組みとして、CRC全員に携帯情報端末「iPad」を支給し、一部製薬企業の治験でEDC入力用に活用し始めた。
CRCがモバイルデータ通信を持ち運び、いつでも外出先で症例報告書(CRF)のファイルを閲覧したり、データ入力が可能というシステムである。これにより、パソコンを立ち上げる手間が省け、EDCを使ったCRC業務の効率化が期待される。当面は、EDCで試験的に運用し、CRC業務にどう活用できるか可能性を検討する。
CRS研究所は、北海道の地域密着と産婦人科領域を強みに、小所帯ならではの実力を発揮してきたが、最近は圧倒的優位と考えられてきた得意分野にも、競合他社が見られ始めているという。植草氏は「産婦人科領域は、自信を持って質の高い仕事ができる得意分野で、社員のモチベーションも上がる。だからこそ、今年は初心に返って一つひとつの試験に取り組んでいきたい」と気を引き締めている。

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