驚異のスピードエントリー
~婦人科領域で大型案件開始~
CRS研究所は、地場SMOならではの医療機関の強固な信頼関係や機動力の高さを生かし、得意の婦人科領域で子宮筋腫を対象とした国際開発案件について、脅威のスピードで全国1例目のエントリーを成功させた。日本より1カ月以上早くスタートした海外からの遅れを、約1週間にとどめるという迅速な対応ぶりで存在感を示した。植草友幸社長は「製薬企業、CRO、医療機関、関係者の方々の協力があってこその結果。世界1例目を逃したことは残念だが、十分なパフォーマンスを示すことができた」と胸を張る。
昨年度の業績は、第1四半期は堅調だったものの、その後に婦人科プロジェクトの端境期に入って業務が減り、新規案件はあったものの、年間を通すと全体としては厳しい1年になった。植草氏は「ここのところ谷の年が以前より早いペースで来ている。SMO事業に波があるのは当然としても、予想していたより少し大きな波だった。ただ、設立から15年で体力を付けたので乗り切ることができる」と話す。
また、「今期は婦人科領域で予定していた複数の大型案件がスタートする」と復調の原動力として期待を寄せる。
ひとつは夏に開始予定の、子宮腺筋症の第Ⅲ相試験で、比較試験と長期投与試験の2プロトコールを札幌産婦人科治験ネットワークの5施設と組み、目標症例数としては全国の1/3程度の60例を見込む。秋には、子宮筋腫と子宮内膜症の第Ⅲ相試験も予定されており、こちらは来期にかけて100例以上を組み入れる予定。
これらの試験は前相からの引き続いての受託であり、既に実施が内定していたが、その後に舞い込んできたのが冒頭の子宮筋腫の国際共同治験だ。タイミング的には受入れを躊躇する部分もあったが、新しい作用機序を持つ薬剤であり、新規性が興味を引いた。
海外では先行してキックオフミーティングを迎えていたが、1ヶ月遅れで国内試験の準備を進める中で、まだ海外でエントリーが無かったことが分かったため、世界1例目を意識して治験依頼者・CROと連絡をとりながら準備を急いだ。最短で準備をするため、治験依頼者の海外本社ともメールでやりとりした。結果的には狙い通りにいかなかったものの、国際案件では異例のスピードで準備を進行させた。
産婦人科吉尾医院と産科婦人科はしもとクリニックの2施設がこの国際共同治験に参加しており、2施設で国内予定例数の1/3を実施、と症例数でも大きく貢献する。
植草氏は「どうして日本のスタートが遅れるのかというと、資材の翻訳の問題もありますが、治験届に行き着くのかもしれません。またチャンスがあれば、次こそ世界1例目を目指したい」と話す。
このほか、昨年から継続している整形外科領域、血液内科領域の試験も実施していく。
さらに、これまでも密接に連携してきた札幌の病院と、院内の臨床研究や製造販売後調査の事務局支援を含めた包括契約を新たに締結した。「動き出して半年以上経つが、良い経験を積んでいる」という。
昨年6月には、一時は郊外に移した事務所を札幌中心の大通り公園近くに戻した。
今後も「日本はスピードとクオリティが世界一」を北海道から発信する。