意識向上させたOTCへの挑戦
品質管理に携帯端末の活用も
CRS研究所(札幌市、社長植草友幸氏)は、得意とする産婦人科領域で一般用医薬品(OTC) の治験に取り組み、新境地を切り開いた。4月からは品質確保を目的に、携帯情報端末(PDA)の 活用を開始。CRC全員がPDAを携帯し、常に併用禁止薬チェック、プロトコール管理、 問い合わせ等に対応できる体制を作り上げた。PDAの活用はCRCから自主的に生まれてきた アイデアだ。こうした現場の高いモチベーションこそが、難易度の高い試験で結果を出すCRS 研究所の原動力となっている。
★産婦人科領域で確固たる立場へ
屋台骨を支える産婦人科領域は、現在150例以上を契約しており、「札幌産科婦人科治験ネットワーク」 の5施設がフル稼働している状況にある。 そのうち約100例を占めるのが、新たに開始した感染症のOTCである。もちろんOTCとはいえ、治験は医療用医薬品と同じ新GPC準拠で実施される。
大きく違うのは、販売されると全国の薬局・薬店、ドラッグストアに並ぶこと。そのため植草氏は、 「OTCの治験に挑戦したことは、医療機関とSMOのモチベーションを高める良い機会になった」 と話している。実際にOTCの治験は、SMOとして幅を広げる意味で、初めて営業に歩いて獲得 した仕事でもある。それが医療機関とCRCの意識向上、スキルアップをもたらした意義は小さくない。
産婦人科領域に関しては、今後も性感染症、切迫早産、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症など、 新薬開発のニーズは高いと見られる。CRS研究所では、これまで積み上げてきた実績をアピールし、 産婦人科領域で確固たる立場を築きたい考えだ。
★ 整形領域のスピードで実力発揮
もう一つSMO業務として、昨年、透析専門病院H・N・メディックでスタートさせた難治性皮膚瘙痒症の治験も順調に進んでいる。既に目標としていた10例を大きく上回る20例以上の組み入れを達成。 難易度の高い試験ではあったが、症例集積が進んでいるモデルケースとして注目を浴びた。この試験も、 医療機関とCRCの意識を高め、スキルアップにつながったと考えられている。
立ち上げ当初からのCRC派遣業務も、得意とする整形外科領域で90例以上の契約を抱えている。 CRC派遣業務の中心は、人工関節術後の深部静脈血栓症(DVT)予防。多くの治験で国内1例目の エントリーを果たすなど、スピードには自信を見せる。
このように、現在200例以上の治験がオンゴーイングであり、これらを産休中のCRCを除く9人の スタッフで対応している多忙な状況にある。しかし、品質確保を最優先する考えから、人員増は考えて いない。9人とはいえ、5人の日本臨床薬理学会認定CRCを中心とする現場の意識は高く、品質向上 への取り組みにも余念がない。
こうした中、自主的に生まれてきたアイデアがPDAの活用だ。併用禁止薬チェックからスケジュール 管理まで、PDAの用途は幅広く、CRC1人でCRFを二重チェックする品質管理の一環にもなって いる。
CRS研究所が手がけてきた実績を見ると、総じてプロトコールの難易度が高い。それでも少人数で 結果を出せるのは、品質重視の姿勢が全員に浸透し、医療機関のポテンシャルが高いからに他ならない。 「あくまでも治験の主体は医療機関である」と強調してきた植草氏。これまで積み上げてきた実績は、 そのポリシーに対する答えだ。