企業が院内治験業務代行

~CRC派遣など柱 新薬開発の環境整備へ~

医療機関が複雑化した治験をより受け入れられやすいよう、治験コーディネーター(CRC)派遣などの院内の治験業務を代行する企業が道内でも増えてきた。新GCP施行による国内の新薬開発立ち遅れが指摘されているだけに、こうした企業が橋渡しとなり開発環境整備へ巻き返しが期待されている。
平成9年の新GCP施行後、治験に関する規制が厳しくなり、日常診療の支障を避け治験数は激減した。厚生労働省の治験計画届出状況によると、新有効成分の初回治験届出で昭和62年から平成7年まで年間100件以上だったのが、10年以降は50件台と半分以下。
依頼者側の製薬メーカーも開発期間長期化、開発費用圧迫を懸念し、米国を中心に海外での臨床試験に方向転換せざる得なくなっているのが現状だ。
しかし、大学院などは自前で新GCP治験体制が整いつつある中、医療機関側に立って治験責任医師らの院内マネジメント業務代行(SMO=Site Management Organization)、治験依頼者業務受託(CRO=Contract Research Organization)を事業の柱とする企業が全国的に増えてきた。
本道ではCRC教育に重点を置くセルプロダクト、昨年札幌支社を開設し全国展開をするシミック、コンサルティング業務メーンの北海道CRS研究所など数社が、それぞれ特徴ある事業を展開。
新GCP啓発、事務局や審査委員会を含めた治験に必要なスタッフ配置、院内組織の立案をはじめ、日常診療に多忙な医療スタッフに替わって被験者の説明・同意取得、服薬確認、有害事象対応管理に当たるCRC派遣など幅広い。
企業と契約した札幌市内の民間病院では、「治験業務の院内啓発につながり、信頼性の高いデータが得られた」「CRCがいなければ今の治験はできない」と評価。「病院経営にさほど反映しないが、創薬の最前線にいる使命感と自院のレベルアップにつながる」という国立病院薬剤師も。
一方、厚生労働省は第四次医療法改正で、医療機関の広告に関する規制緩和項目に治験実施施設の掲載を含めており、今後、治験に力を入れる施設が増えそうだ。