産婦人科領域への集中図る

~前期は過去2番目の業績~

北海道のSMO「CRS研究所」は2017年2月期決算でその前年度を上回る過去2番目の業績を達成した。子宮筋腫、子宮内膜症、月経困難症の治験では目標とする症例数以上の組み入れを実現した。さらに今年は子宮筋腫などで大型案件を受注したほか、提携施設でのリスクベースドモニタリング(RBM)の対応もできつつあり、SMOとして一つ上のステージを目指す。植草友幸社長は、「産婦人科領域の案件が集中する年となる。リソース面では治験コーディネーター(CRC)を増員し、品質を重視した仕事に取り組みたい」と語った。

同社設立18年目となった昨年度は、産婦人科領域に強いSMOとしての面目躍如の年となった。子宮筋腫の治験では、全体症例数の2割強に相当する組み入れを実現した。複数のSMOが参加する試験だったが、同社からのエントリー数が多かった。

子宮内膜症の治験では進行中ながらも現時点で目標症例以上を達成し、その後の第Ⅲ相試験では施設数を増やす予定だ。月経困難症の治験でも目標症例をほぼ満了した。

今後も勢いは続きそうだ。植草氏は「婦人科の治験数は多く、今年は近年まれにみる忙しさになる」と見ており、受けたプロジェクトを計画通り動かしていくことが最重要課題だ。今月から開始する子宮筋腫の治験は、初期合意は60例となっているものの、植草氏は「100例近くまでを目指したい」と意欲を示す。ターゲットにしているのがグローバル第1例目の獲得だ。そのほか、2社から4試験を予定。婦人科領域への集中路線から、リソース面での対応を強化し、CRCを増員した。

そして品質とスピードへの対応を図る。臨床試験で“speed with quality”を標榜する同社だが、昨年から施設側でRBMを動かしていく準備を進めてきた。医療機関側での治験実施手順を定め、CRCが何を行うべきかを列挙した「治験プロセス管理マニュアル」を作成し、子宮筋腫の治験で運用した。医療機関側でのプロセスの可視化やCRCの意識付けといった目的があったが、現場のCRCが経験した感想としては、「マニュアルをつくったが、それ以前の手順と特に変わらなかった」という実感だったという。

植草氏は、「マニュアルはCRCの“暗黙知の可視化”であり、正しい手順で業務を行っていれば変化がないと予想していた」と受け止める。プロセス管理マニュアルがあることで、「CRCの品質管理プロセスに対する意識付けが高まったのは確かで、品質面で良い影響が見られた」との認識を示した。

運用してみて、手順が違うと感じた場合には「マニュアル」を改定し、改善活動につなげた。特に治験薬の管理方法については「治験開始前から意識することができた。治験薬では使用中のものと未使用のものを取り違えないように、治験薬の箱に印をつける手順に明文化した」と特定されたオペレーション上のリスクに対しても、未然にミスを防止できるようにした。

生産性向上に向けても、臨床開発モニター(CRA)が原資料と症例報告書を照合する「SDV」の工数は確実に減少し、他試験では月1~2回の頻度だったのが、RBM対応では2~3カ月に1回まで減らすことができた。マニュアルによってプロセスが可視化されており、モニターからの疑義の内容も、手順を見れば解決できるものもあり、確認の意味で繰り返し質問をされることがなくなり、モニターもCRCも業務量を減らすことができた。

マニュアルがあることで品質管理のPDCAサイクルをまわすことができる。植草氏は、「CRCのRBMに対する理解度は上がった。マニュアルを取り入れた成果や収穫はあった」と話す。産婦人科領域に強いSMOとして、「ボリュームで全国トップを取るのは難しいが、医師の先生方と協力して品質の良い症例をきちんとエントリーしていきたい」と品質で選ばれる会社を目指していく。